みっと日記

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APEXと国際体操連盟(FIG)の提携解消の記事の日本語訳をつくりました。

2017年5月13日にAPEX School of Movementが公開した、国際体操連盟(FIG)との提携解消およびAPEX INTL 2017中止に関する記事全訳を掲載します。

まず最初に、本記事の翻訳にあたりご協力頂いた、ユ~イチロ~さん、ご協力の連絡を頂いた有志のトレーサーの方、そして記事全文の翻訳許可をくださったAPEXのAmos Rendao氏に感謝の意を述べさせていただきます。また、本記事をベースにしたFIG騒動の詳細な説明については、女性向けパルクール情報サイトJapan Parkour Woman’s Community(JPWC)さんのご厚意により、JPWCへの寄稿記事とさせていただきました。

また、本記事における日本語訳については、専門家によるものではありませんので、翻訳、解釈が誤っている箇所や分かりにくい箇所がある可能性があります。お気づきの点につきましては、コメント、ツイッターなどでお伝えいただければ幸いです。

 

原文:APEX Ends Collaboration with FIG & Cancels APEX INTL in France

 

タイトル:APEXは、FIGとの提携を解消し、フランスでのAPEX INTLを中止します。


■序文
APEXの競技に対する姿勢、およびなぜ我々が一番最初にこのような機会について検討したかについてご存じない場合は、第1部の「競技と提携について」をご確認ください。

※第1部については、現在翻訳記事はありません。


パルクール、体操、APEX、The Mouvement、エクストリームスポーツ国際フェスティバル(FISE)、国際体操連盟(FIG)、その他の団体。一体、何が起きているのか?皆さんがこのようにお考えだとしても、あるいは、皆さんがコミュニティにおいて建設的な議論に参加しているとしても、なぜ我々がこれ以上この機会を追求しないのかについて説明すると同時に、より詳細に説明をする時間を頂ければと思います。


Eメール、電話、プレスリリース、そして先週のFIGのインタビューのおかげで、新しい事実が暴露され、モンペリエでのAPEXのイベントの本質とその影響が大きく変わっている、という状況の変化が明らかになりました。FIGの議題は、最近のアンドレ・ガイズビューラーFIG事務総長のインタビューの中で明確に表現されています

現在、パルクールの実践者たちは組織化されていません。彼らの基本的な精神は自由であることであり、組織化されないことです。しかし、彼らは競争することを望んでいます。しかし、もし彼らが競技をするならば、彼らには最低限のルールおよび魅力的な競技にするための環境が明らかに必要です。私は、FIGこそが、パルクールをより一層発展させる、最も資格のある国際連盟であると確信しています。 

 

(訳注)APEXは、以前よりAPEX主催の、パルクールを元にした障害物競走形式の競技であるObstacle Course Sprint(OCS)を開催しており、2017年5月28日にフランスのモンペリエ市にてAPEX INTL 2017という国際競技イベントを開催する予定であった。また、このイベントは、国際オリンピック委員会のメンバーの多くが視察に来る、何十万人もの観客がいるエクストリームスポーツ国際フェスティバル(FISE)の中で取り上げられることになっていた。

 

私たちは、FIGがパルクールを統治することを支持しません。我々に与えられていた機会は、もはや表面上の情報とは全く異なっており、我々の競技形式の命名に対する重要な保証事項は、FIGによる声明の中で堂々と無視されました。我々の最も重要な保証事項がFIGによって保証されず、認められないだろうというのは明らかです。FIGの(パルクールの競技化に対する)関心と、私たちの国際的なパルクールコミュニティの一歩一歩の前進が一致することはありません。パルクールコミュニティの代表、そして守り手として、私たちは、FIGとの提携関係を終わらせます。


■追加の背景情報
2016年の終わりに、我々はThe Mouvementより、我々が考えている障害物競走の形式を、もっと名声のある国際的な場に持っていくための潜在的な可能性について学びました。以前に使用していた形式の名前であるTime Trialsは、他のスポーツにもあてはまる名前であるため、私たちはより的確な名前として、Obstacle Course Sprint(OCS)と名付けました。FIGとFISEが我々の重要な提携相手として現れる2017年2月および3月までは、議論は深刻にはなりませんでした。我々には、2017年6月より前に、主要な国際的イベントを開催するという期限がありました。そのイベントは、オリンピックへの参加を考慮に入れた最後の実演となりうるはずでした。期限は切迫していましたが、私たちはAPEX INTL 2017の開催について、慎重ながらも楽天的であり続けました。

 

■提示された機会

現在、オリンピックを考慮に入れて、我々のOCSの競技形式を支援するパルクール国際連盟は存在しないため、FIGと組む道は、我々には好奇心をそそる、興奮する機会だと思いました。また私達は、その他のメジャーな競技が、確立された基盤の上で、オリンピックの世界的な舞台に入ってきたことも知っていました。その機会がどのように見えていたかは、下記の通りです。

 

・コントロールと保護

私たちは、最終決定権を持つことになるであろう最も高位な委員会において、2名分の座席を持つことで、進行中のOCS競技の開発、発表、競技形式やその他に対して、多大なコントロール力を持つはずでした。

 

・命名
私たちは、パルクールを競技スポーツとは認めない立場を取っているためパルクールや体操、フリーランニング、ADD、そしてparcours gymnasticsのような重要な禁止用語については、私たちの競技形式の名称として用いられることは決してないと保証されました。私たちは、この競技形式の命名の過程において、多大な統制力を持つことでしょう。

 

パルクールの統治
FIGが、パルクールを統治することに対して興味があるという言及は一切ありませんでした。

 

■現実的な状況の変化

現在、私たちは、確信していたことを実現させるのに苦労しています。先週、以下の事項を含めて、多くの矛盾した情報が表面化しました。

 

・コントロールと保護
先週、私たちは、我々のスポーツの発展を守るためにもともと保証されていたコントロール権が、無くなっていることを示す情報を発見しました。それは、OCSの発展における最も高位な統治委員会として理解していた私達の2つの保証された席が、1つになっていたことです。そして、FIGの代表が、実際にはこの運営委員会の舵を取るだろうということも明らかになりました。最後に、運営委員会(2018年選出の委員会)の選挙に関するFIGのルール変更の提案により、運営委員会におけるただ1つの席もすぐに無くなってしまうだろう、ということも発見しました。これによって、モンペリエでのイベントの後、私たちが(OCSに)どのようなコントロールと保護を行えるかという疑問が出てきました。


FIGに関連する全てのメディアにおいて、APEXがオリンピックに向けてモンペリエでOCSを実施するという記述はほとんどなかったことが、私たちは最終的に追い出されるかもしれない、という疑念を加えました。

 

・命名
特定の用語をこの新しいオリンピックスポーツの命名に使用することを禁止する保証事項は、FIGのプレスリリースにおいて明らかにされました。これは、FISEのウェブサイトに載っていたイベントリストやFIGに対するメディア取材のような過去の失敗に起因する前回の影響を少なくするのに役立つでしょう。これらの禁止用語は、疑わしげに、FIGの最終プレスリリースにおいて、理由説明なく削られていました。

 

 ・パルクールの統治
FIGが「組織されていない」パルクールコミュニティの「自由な」を精神を吸収して統治しようとしていることが明らかになりました。これは、パルクールの不正利用かつ侵害です。FIGは私たちに対する説明も、アンドレ・ガイズビューラーの前述のインタビューに対して、一切謝罪もしませんでした。私たちは説明を求めましたが、無駄でした。


私たちは、FIGがThe Mouvementの前代表1名をFIGの実行委員会のメンバーに加えることでThe Mouvementを分解させるという計画の概要情報にも晒されています。特に教育とコーチングのために運営を先立って行う団体のメンバーになるだろうこともわかっています。FIGのために教育とコーチングを先立って行なっているThe Mouvement(パルクール、フリーランニング、そしてADDの創始者)の会長は、FIGの計画をより一層示唆しています。


これらを総合的に考慮に入れて、早期の契約書案修正のための私たちの要求は、多大な遅延を被りました。私たちは前進し始めるためにFIGから理解したことの覚書(MOU)を受け取りました(期限までにこのイベントを運営するために極めて押し縮めた時間枠が必要だったのです)。契約書案のための再三にわたる要求は未解決でした。それゆえ、私達に提示された本来の機会は保証されませんでした。

 

新しい情報の現実的な表面化と言葉の変化は、FIGのパルクールを統治するという意図をより一層具体化させる、アンドレ・ガイズビューラーの前述のインタビューで最高潮に達しました。これら全ては、進めていた契約書の修正の遅延の渦中で起こり、それによって、イベントを中止しFIGとの連携を解消するという私たちの決定は確固たるものになりました。

 
■影響を受けた関係者への謝罪

私たちは、重大な結果に直面する可能性のある私達の決定を支持してはいますが、今回のイベントの中止によって悪影響を受けた皆様に対して、心からお詫び申し上げます。参加することを楽しみにしていた選手の皆様、オンライン予選のエントリーのために一生懸命だった皆様、起こった論争によって不快感を感じた皆様、お詫び申し上げます。

オンライン予選は休止します。予選トップであった男性選手および女性選手については、次回のAPEX INTL(詳細は今後公開予定)への参加資格はありますが、現時点では今回と同額のフライト費用と賞金は保証できません。

私たちが直面した複雑な状況を理解していただければ幸いです。継続的に改善し、学び、間違いを正すために、常に最善を尽くしていることをご理解ください。

 

■謝辞

十分な情報を得ようとし、思慮に富んだ対応をしてくださり、そのような複雑な状況の中で援助を申し出てくださった方々には、我々の心からの謝意をお受け取りください。ユージン・ミノーグ、ジュリー・エンジェル、デイヴィッド・アイビー、ジョン・ホール、ダミアン・パドル、デイヴィッド・ボーデン、ダン・イアボニ、以上の方々の彼らの思慮深い考えと建設的なコミュニケーションには特に感謝したいです。私たちが見逃した、または直接お話ししたわけではなくとも、生産的な対話の中で明瞭でフェアな意見を下さった方々にも感謝します。あなたたちは私たちのコミュニティを強くする人々です!

モンペリエのAPEX INTLのためのコース建設を目指していたJUMP Freerunのフィリップ・ヴァン・エースとマーク・ヴァン・スウィーテンに大いに感謝します。あなたたちと協力できたことは喜ばしく、将来的に提携するのを楽しみにしています。あなた方がなさることは目を見張ることばかりで、我々はあなたたちに敬意を持っています。

 

■行動換気

私たちは若く、活気に満ちたコミュニティで、(まだ)正式に認められたパルクールの国際的な組織・統括団体ではありませんが、パルクールの外にいる国際組織が、パルクールコミュニティの発展についてルールと規制を作ることは、絶対にして欲しくありません。例えば、質の高い教育資源とコーチング資格を開発するの膨大な時間をかけてきた沢山のパルクール団体があります。もし各国において、国内の体操統括団体だけが唯一の認定パルクール団体となった場合、既存のパルクールの熟練者達は、危険な上に(あるいは)薄まってしまった新しい形のパルクールがこれまでのパルクールに勝利することにより、パルクールの世界から追い出されてしまうかもしれません。


パルクールの正統性と主権を守るためには、国際的パルクールコミュニティは、真に民主的で中立で、真正な国際連盟・統括組織を設立しなければならないことは明らかです。国際組織は、豊かな多様性を有する我々パルクールコミュニティの代表であり、認められた質の高い統治の原則と価値観に基づいて設立されなければなりません。もし私たちパルクールコミュニティが、私たち自身の国際連盟を創設しない場合、外部の計画、利益を求める組織からの攻撃に晒され続けるでしょう。

 

国際連合として認知されるうえで複雑な要因の1つは、国際スポーツ連盟(GAISF)の規則により、スポーツ規則には競技性がなければならないということです。おそらく、その解決策は、国内および国際パルクール連盟によって統治されているパルクールから着想を得た競技イベント(OCS、チェイスタグ、S-T-I-C-Kなど)を作ることです。

あなたは、パルクールコミュニティから利益を貪り食おうとしている、大規模な官僚主義の負の側面に対して立ち向かいたいですか?
それぞれの国で、民主的かつ公平な方法で全国組織になるために活動しているパルクール団体を支援してください。

 

Parkour UKを支援してください!彼らはすでに認知されており、現在パルクールを統治しようとしている外部組織との戦いの先頭に立っています。Parkour UKは、パルクールの不正利用と侵害に関する公開書簡の中で、他国の国内組織の設立を支援するために、彼らの独自な経験と専門知識を積極的に提供してくれています。この反対運動に貢献するツールや情報源を持っている人は、ユージン・ミノーグ(Parkour UKのCEO)に連絡し、どのように協力できるか教えてください。彼らには私たちのサポートがあります!

 

皆さんが見たい変化に、皆さんがなりましょう!この国際的なパルクールコミュニティの美しい多様性の中で、トレーニングを継続し、話し、パルクールの発展の中であなたが見たい「今」を表現してください。

 

堂々と振舞ってください。自分の意見を大きな声で話してください。自問自答してください。APEXに、他のパルクール組織に、仲間たちに質問してください。ここには指導者はいません。丈夫な台座もありません。十分に情報収集してください。建設的な議論に貢献してください。効果的な解決方法を思い描いてください。

 

これまでの10年間、私たちを支えてくださった皆様ありがとうございます。私たちを圧倒している窮地に対する対応にご辛抱いただきありがとうございます。この障害は私たちをより強くうより賢明にしてくれただけです。そして私たちは次のステップに向けてワクワクしています。

 

敬具
アモス・レンダオ、ブランドン・ダグラス、ライアン・フォード